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1960 年代以降,日本は,アフリカを舞台にした霊長類学と生態人類学において特異な業績を挙げ注目された。その最初期,未だ戦後復興期の日本から,アフリカの最も奥地カラハリ砂漠の真ん中に赴いたのが, 田中二郎である。太古以来の狩猟採集生活を送るブッシュマンに密着し,実は植物に強く依存するその生活の実態を明らかにし,子育てや労働と遊びなど,新しい狩猟採集像を示し世界を驚かせた。一方で,遊牧民, 農耕民,霊長類研究へと,アフリカ研究の拡大を組織し,国家による近代化政策の中で急速に変貌する伝統社会の問題を鋭くレポートしてきた。
その半世紀におよぶ成果を,400 枚以上のカラー写真とユーモア溢れる文章で纏め上げたのが本書である。 社会変貌の中で,今は全く見られなくなった狩りや物質文化,伝統社会と近代のせめぎ合い,道も無いブッシュでのサバイバル・ドライブの技術等々,多くのコラムも配置し貴重なデータを提供する。
〓推薦 山極壽一氏(京都大学総長)
日本のフィールド科学が世界に評価されるようになったのは,半世紀におよぶアフリカ研究があったからに他なりません。そして,その研究をリードしてきたのが,霊長類学と文化人類学を修め,生態人類学という学問を切り拓いた田中二郎さんです。国際学会の生涯功労賞に輝きながら誰もが「先生」とは呼ばない,二郎さんの人柄と活力が,ブッシュマン調査から始まったアフリカ研究をどう広げていったのか。本書では,ユーモアに溢れしかも学術性に富んだ文章と多くのカラー写真で,その経緯がつぶさに語られます。
この間,アフリカは,いわゆるグローバル化の波をいち早く受け大きく変容もしました。だからこそ,今日世界に広がった混迷を解決する道も,アフリカから学べるのではないか,といま私は考えています。本書が,専門分野や職業の違いを超えて,未来を真剣に考える多くの人々の指針になると信じています。
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