原稿の下に隠されしもの

原稿の下に隠されしもの

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出版社
笠間書院
著者名
久松健一
価格
2,750円(本体2,500円+税)
発行年月
2017年7月
判型
B6
ISBN
9784305708304

ふたりの原稿の下には「禁秘〈タブー〉」がある。そこには毒が仕込まれている。

出自にからむあれこれがあり、卑下のなかに虚栄が香り、したたかな戦略もまた見え隠れ。そうした暗部にためらわず手を突っ込み、つかみあげたい―。引用や模倣に目を配り、その有様を具体的に検証することから、創造の原理を考える書。



遠藤に、寺山に、躊躇なく迫る。目指すのは日向水のようなぬるい論考、分析ではない。

あわせて、こんな着眼も開示する。手放しで称賛されている感のある映画『沈黙』だが、はたしてそうか。本書はかく問いかける。



【...ところが、英訳ではキリストが話しかける。Trample!(「踏みつける」の命令)とロドリゴを誘う。マーティン・スコセッシ監督の『沈黙--サイレンスー』も根は同じ。踏絵のシーンで神が言葉を発している。だが、キリストが本当に声をあげたなら、論理は破綻する。

 キリストが沈黙を破った瞬間、それまで存在を疑っていた神がいると証明されたことになる。踏絵のなかに、手の届くところに神はいる。クリスチャンは救済を約される。踏絵、棄教云々などどうでもいいはず。ロドリゴは叫べばいい。穴吊りされている信者に向かって「安心めされ。神は沈黙を破られた」と伝えればそれでいいではないか。

 原文は、神の沈黙がはたして破られたのか否か判然としないままであり、それが『沈黙』の玄妙ともなっている。この点がゆがめられている。】......第4章内容より

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