取り寄せ不可
カルロが亡き姉の忘れ形見を引き取ると言い出して、1年。
カサンドラは姪を連れ、あてどなく街から街へと移り住んでいた。
あの日、妊娠を伝えた姉に、中絶費用を送りつけてきたカルロ。
無言の侮辱に耐え、姉は出産したが、そのときの非情な仕打ちを
思い返すだけで腸が煮え返る。そんな男に姪を渡す気はない。
海から少し離れたところに宿をとっていたカサンドラは、
浜辺から戻ってくるなり、フェラーリに気づいてふと足をとめた。
車から、一分の隙もない身のこなしの男性が降りてきたからだ。
それは、冷酷な人でなし――大富豪カルロ・バレンティだった。
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