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男女の複雑怪奇な心理の綾
ミルハウザーが59歳だった2003年に刊行された本書は、匠の技巧を堪能できる、粒ぞろいの中篇集だ。ミルハウザーは、『三つの小さな王国』『魔法の夜』が証明するように、優れた中篇作家でもあるのだ。
売りに出した自宅を女性が客に案内するなかで、思いがけない関係が浮かび上がる「復讐」、官能の快楽に飽いた放蕩児が、英国の貴婦人に心を乱される「ドン・フアンの冒険」、王妃と騎士の不義を疑う王の煩悩、王の忠臣が悲運を物語る表題作を収録。
「木に登る王」では、騎士トリスタンと王妃イゾルデと王の悲劇を傍観しつつ、重要な節目では当事者ともなる王の忠臣トマスの語りが冴える。三角(もしくは四角)関係の当事者・準当事者たるこの三人の心理のさまざまな層が、ミルハウザーならではの律儀な丁寧さで――意外性を伴って――仔細に述べられてゆく。
本書は、「複雑怪奇化した男女関係」というテーマの一貫性が、書物としての統一感を生み出し、三つの中篇作品の累積的な読みごたえにおいて、ミルハウザーのひとつの到達点と言えるだろう。
男女の複雑怪奇な心理の綾、匠の技巧が光る極上の物語!
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