古典ギリシア学者にして禅者である聖和学園短期大学元学長・松田紹典。古代ギリシアの知見から日本を見、仏教者の目で古典ギリシアを読み解く、独創的な論考集。
第一部「古典ギリシアの運命観と論法」は、アリストテレスからディオニューソス、エロースそしてデルポイと、取り上げる領域は哲学から神話、伝承と広範に及ぶ。厳密一点張りの論証に信を置かず、救済を約束する声高なことばを怪しみ、古代ギリシアの民衆に潜むさまざまな伝承・祭儀・神話の森に分け入ろうとするのは、それこそが示唆に富む智慧の宝庫だからである。
第二部「古典ギリシアの冥界に見る「蛙の浄土」」では、アリストパネースの喜劇「蛙(バトラコイ)」を扱う。十一章からなる一連の論考は、冥府下りのドラマの背景をなすおびただしい神話・伝承を、ホメーロス、ヘーシオドスといった詩人から、プラトーン、アリストテレスという哲学者、そしてパウサニアスやアポロドロスといった旅行者……と可能な限りの文献を漁り、各地に残る故事来歴を調べ、神殿・彫像に至るまで広く渉猟し、次から次へと話を紡いでいく。
宗教、伝承、哲学と古典ギリシアの文献に遊び、意の赴くままに仏典から漢籍へと渉猟する、学術エッセイ。
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