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業平が創造した物語は、どのように継承され、豊かな世界を築き上げてきたのか。
成立論、作品論、享受史論など、多様な視点から探究。日本神話、中国説話、絵画資料ほかの、さまざまな材料を用いて通説を再考し、本来の正しい理解を探索する。各論が多様に連環し、伊勢物語の総体を描き出す。
【……業平が生前に、「ある形の伊勢物語」を、どこまで、どのような形で書き終えていたかを示す資料は残されていない。だが、九世紀後半の貴族社会や宮廷を驚かせたと思われるそのきわめて印象的な作品は、……古今集の詞書からもうかがわれるように、高い評価とともに次の時代に読み継がれ、さらには人々によって新しい章段が次々と書き加えられることによって、姿を変えつつ後代に継承されてゆくことになったと考えられる。その新しい章段の増益は十世紀後半まで続き、やがて伊勢物語は現行のものに近い姿となったと考えられるが、それらすべての根元は、天才的な才能によって新しい画期的な作品世界を創出した、在原業平という人物から始まったと考えられるのである。】……「第一章 物語の始発」より
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