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量子群は,様々な数学的構造の対称性を表す「群」と呼ばれる基本的な数学的対象を,双対性と呼ばれる原理に基づいて群でないものに変形した新たな数学的対象を与えている。Drinfeldによる1984年の国際数学者会議での講演で語られて以来,数学や数理物理学の様々な文脈で用いられるようになり,関連する研究が爆発的に進展している。また,様々な数学の分野の間に思いもよらなかったような関係をもたらしており,とても応用範囲が広い。
本書は,現代数学や数理物理学の様々な分野が「量子群」と呼ばれる体系を通して交錯し,深く豊かな相互作用をもたらす様を,様々な例とともに解説していく,量子群の入門書である。「定義」,「命題」,「定理」が続くような書ではなく,この理論にどのような概念が現れるのか,その意義は何かということについての説明を重視している。代数・解析・幾何・数理物理の幅広い分野の切り口から,「双対性」や「量子化」といった原理を元にして量子群が現れる過程を描いていく。
量子群に至る様々な方法論として,Yang-Baxter方程式のほか,非可換コンパクト空間上の群構造,量子対称性の理論など,既存の和書ではあまり解説される機会の少なかったものについてもバランスよく解説している。重要な事柄については要点を巻末の付録で解説し,各章の説明の補足としている。
まるで「地球儀」のように,量子群に対する様々な分野・方法論を見渡すことのできる,格好の入門書と言える。
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