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『三教指帰』は空海の名著という通説をくつがえし、若き日の空海像を描き直す。
「文章論」で迫る画期的な空海研究。
漢文とは何かをあらためて知るためにも最適な一冊。
「三教指帰偽撰説」を提唱した著者が、その内容を丁寧に論述した待望の書き下ろし。
空海が著わしたとされる『三教指帰』は、日本漢文史上の傑作、日本最古の戯曲などと称され、日本文学史上に重要な価値をもってきた思想書である。
その「序」の部分には空海自身の伝記があることから、空海の青年期を研究するための基礎資料として不動の価値を与えられてきた。
そしてそれは、空海が24歳で著わした『聾瞽指帰』を、後日みずから改稿したものとされ、内容・文体など、より完璧を期した作品と考えられてきた。
しかし著者は、伝統的に語られてきた『三教指帰』は空海が改稿したものとする通説に疑問を投げかけ、それは空海ではなく他の何者かによって改変されたもの(偽撰)だったと主張する。
『聾瞽指帰』は空海の真蹟として国宝に指定されている。他方、『三教指帰』の最古の写本は空海没後300年のもの。より完璧なはずの『三教指帰』は空海没後より300年間、書写されることなく、読まれることもなかったのか?
素朴な疑問は『三教指帰』偽撰の予感となり、『聾瞽指帰』と『三教指帰』との詳細綿密な文章比較の結果、その予感は確信となる。
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わたくしの偽撰説は単純な文章論である。特に『聾瞽指帰』と『三教指帰』の序文にみる文体の相違、文体が変われば用語も変わることがわたくしのなかで偽撰を決定づけた。
両指帰の大きな相違点は本文はほぼそのままにして、序文だけを違った文体で書き改めるところにあるが、この不細工を無類の表現者である空海がするはずはなく、後日再治するというならば、空海はたちどころに全篇を書き直したであろうと思う。
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『三教指帰』が偽撰ならば、従来の空海像は再考を要するであろう。
本書後半では従来なぞとされてきた空海伝をめぐる諸問題が明らかにされていく。
“支那学”の伝統のなかで著名な碩学に学び漢文を「読む」ことを絶えず研鑚してきた著者にしてはじめてなし得る瞠目すべき論証は、「信仰」による漢文の読みを排し、正しく漢文を読むことの意味をあらためて示す。
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