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茶道を通じて、日本文化の真髄と日本人の美意識を西洋に広めるために、岡倉天心が英語で著し、1906年にニューヨークで刊行された『茶の本』を、大日本茶道学会の新会長である著者が、新たに日本語訳し、わかりやすく解説。難解な名著をやさしく読み解く工夫として、本書は 『茶の本』を最終章からさかのぼって読んでいく。西洋文明に対峙し続けた天心の「日本」への想いは、世界と向き合う現代の日本人へのエールでもある。
『茶の本』は、茶道を通じて日本の文化の真髄を西洋に広めるために、岡倉天心が英語で著し、1906年にニューヨークで刊行された。東洋の伝統的精神文化を説く文明論として、『東洋の理想』『日本の覚醒』とならぶ天心の代表作である『茶の本』は、茶に関する名著というだけでなく、茶道を嗜まない人々にも、日本文化の美意識を伝えるものとして読み継がれており、学術文庫でも桶谷秀昭氏の訳でロングセラーになっている。
本書は、本年、大日本茶道学会の会長に就任した著者が、この天心の名著『茶の本』の新しい日本語訳と、それに対する解説を試みたものである。とかく難解といわれる『茶の本』を、現代の茶道の実践者であり、芸術社会学者として大学の教壇にも立つ著者が、わかりやすく読み解いていく。
『茶の本』の難しさは、100年前の西洋人に向けて書かれていること、英語によるレトリックを駆使した文体などにあるが、もう一つは、巻頭から茶道の本質や哲学、道教とのつながりなど、思想的な議論に踏み込んでいることが上げられる。そこで本書は、『茶の本』の最終章から遡って読むという工夫をしている。第一章から読み始めるより、最終・第七章の「茶人」、第六章の「花」という具体的なことに言及する章から読み始めるのが親しみやすく、また後ろの章の内容を先に知って読むと、天心が前の章で用意した伏線に気がつく…というわけである。
なお、本書は、大日本茶道学会の研究誌、月刊「茶道の研究」に6年間にわたって連載された「『茶の本』入門一歩前」を加筆・修正のうえ、1冊にまとめたものである。
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