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「その秘密の場では、それはすでに場でさえないのだが、矛盾が矛盾でなくなり、同時に、図というものが、なじみぶかい触感とともに消えうせる。人間の言葉がえがける世界は、あとかたもなく消えうせ、あるのはただ、無言にして有無をいわせぬ、色彩のない数式、不動の行列力学の抽象的な壮大さで、その想像をこえる美しさは、あなたの目に見抜かれるのをずっと前から待ちつづけていたのだ。」
1920年代、それまで不動のものとされてきた古典物理学の理論と相反する現象がつぎつぎと見つかり、盛んな論争が展開されていた。そこに「不確定性原理」をもって登場した若きハイゼンベルクは、量子力学の確立への功績でノーベル物理学賞を受ける。「あなたは何気なくポケットに両手をつっこみ、色彩のない空を前にして、無用にして感動を禁じえないほどの若さを保ったまま、可能と現実のはざまに立っていた。」しかし、その後の現実世界は、ナチスの台頭、戦争、アメリカによる原爆投下にむかって進んでいった。
量子力学に魅せられたゴンクール賞作家が、過去と現在を往還しながら、言葉にするのが困難な世界のうちに、これまでにないハイゼンベルクの姿を幻視する精密な小説。
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