ラテンアメリカの農業・食料部門の発展

研究叢書

ラテンアメリカの農業・食料部門の発展

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出版社
アジア経済研究所
著者名
清水達也
価格
2,750円(本体2,500円+税)
発行年月
2017年3月
判型
A5
ISBN
9784258046270

2000年代以降、ラテンアメリカの農業部門は大きく発展している。国外に対しては、中国をはじめとする新興国の需要増加に加え、経済自由化や地域経済統合の進展を背景に、穀類、肉類、青果物、加工品などの生産・輸出が大きく増加した。国内では、好調な経済成長を背景とした消費者の所得向上により、消費量の増加だけでなく、質の高い農畜産品や加工食品に対する需要も増えている。これに対応して、都市部を中心に近代的な小売店舗が増加しているほか、農畜産品を調理して提供するフードサービスも拡大している。このように、かつては立ち後れていた経済部門とみられていた農業部門が、ラテンアメリカの経済成長を牽引する力の1つとなりつつある。これらの成長する農業部門でみられるのが、「バリューチェーン」(value chain)の統合である。
ラテンアメリカの農業部門についてはこれまで、一次産品輸出経済論に代表されるように、農産物の生産とその輸出を中心に分析が行われてきた。伝統的な農業部門では、生産、加工、流通といった経済活動の一連のつながり(バリューチェーン)のなかで、それぞれの段階を担う経済主体が独自に活動し、卸売市場に代表される現金売買による取引関係で結び付いていた。しかし近年の農業部門では、バリューチェーンの各段階を担う経済主体が契約によって他の経済主体と継続的に取引を行ったり、1つの経済主体が複数の段階を所有したりする傾向が強まっている。本書ではこのような経済主体同士の関係が深まる動きをバリューチェーンの統合と呼ぶ。そしてバリューチェーンの統合が進んだことで、生産性が向上して新たな付加価値が生み出され、ラテンアメリカの農業部門が発展へとつながった。
そこで本書は、ラテンアメリカで農業部門が発展しつつある国の1つであるペルーを中心とした事例研究をとおして、バリューチェーンの統合が農業部門の発展に結び付いたことを明らかにする。
本書がラテンアメリカのなかでもペルーに注目したのは、農業部門が現在進行形で大きく変化しているからである。1990年代の経済自由化改革をきっかけとして、輸出向け農産物の生産に向けた投資が拡大したほか、2000年代の自由貿易協定の締結などによって輸出に向けての環境が整いつつある。また、2000年代に入ってからの資源ブームによる順調な経済成長により所得水準が上昇したことで、とくに都市部を中心に、農産物の量だけでなく質に対する需要が増えはじめた。このように現在進行形で大きく変わりつつあるペルーを分析対象とすることで、伝統的な生産や流通が残っている部門と、発展しつつある部門を比較しながら分析することが可能になる。

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