祝福

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出版社
小学館
著者名
長薗安浩
価格
660円(本体600円+税)
発行年月
2017年2月
判型
文庫
ISBN
9784094063936

尊厳ある死を迎えるための老詩人の試みとは

広告制作会社でクリエイティブ・ディレクターとして働く42歳の私は、CF撮影で17歳のモデル、サキと知り合う。自宅が近いということもあり、サキを送って行くが、彼女は途中コンビニに立ち寄り、大量のパンと菓子を買い込み、「あなたの部屋に連れて行ってください」と懇願した。私の家に着くと、サキは購入した食べ物を一気に食べ、今度はそれをすべて吐いた。案じて私がサキの肩を抱くと、彼女は「あたしと、セックスしたいですか」と訊く。そして、「でも、するのは祖父の部屋だけにしてください」と続けた。後日、サキの祖父の部屋に行くと、そこには斑ボケの始まった78歳の老詩人、長谷川がベッドにひとり横たわっていた。長谷川はすでにほとんど寝たきりで、下の世話も自らままならずの状態。私はサキに頼まれ、長谷川を風呂に入れるが、老詩人の刺激的な言葉に共鳴するものを感じるのだった。以後も長谷川の部屋を訪れることになる私だったが、ある日、この老詩人の口から、彼が心に秘めていた計画を打ち明けられるのだった。

【編集担当からのおすすめ情報】
著者の長薗安浩氏は、本の情報誌として創刊された「ダ・ヴィンチ」の初代編集長。本作品の「祝福」は、すでに「文学界」などで小説を発表していた長薗氏が、初めて刊行した長編書き下ろし作品です。2002年の発表ですが、すでに老人の尊厳死の問題を正面から扱っており、来たるべき高齢化社会をいち早く透視していた小説でもあります。文学的完成度も高く、作家の盛田隆二氏も巻末の解説で「冒頭からラストまで、エッジの効いた日本語が吹きこぼれるように続く」と高評価されています。これまで文庫化されていなかった本作品を、こうして新たに世に問う機会を得たことは、編集者としてもたいへん光栄なことであると考えています。ぜひ、ご一読ください。

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