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目次
序章 その時、安倍の言葉を聞いた
二〇〇七年九月十二日、 私は全身の力が抜け落ちるような感覚を味わった。安倍が辞任
する。ただただ悔しく虚しかった――。本書は、安倍が無役の若手議員だったころから、
私が直接、安倍と話し、見聞き体験し、考えてきたことを記す本だ。
第一章 実は出世は遅かった
岸信介の孫、安倍晋太郎の息子、大叔父は佐藤栄作。だが、安倍晋三自身は同期の仲間
たちが次々と政府のポストを与えられる中、ひとり取り残された。初めて政府の役職に
つくのは、当選から実に七年も経った時のことである。
「ここまで外されてきたんだから、もう開き直った。こうなったら、(第一希望の)外務政務次官以外だったら、話が来ても受けない」
第二章 小泉純一郎という両面教師
要職に抜擢され、小泉に仕えながら安倍は二面を見ていた。暗闇の中、天皇が神々に新
米を備える新嘗祭に参列した小泉は「電気をつければいいじゃないか」。郵政解散でも理
念的保守の安倍の同志たちは刺客をたてられ落選。だが、その勝負勘には目を見張る。
「郵政民営化なんて本来、我々が目指していることに比べたら、どうでもいいことではないか」
第三章 小泉さんは、拉致を分かっていない
北朝鮮に同行する直前、安倍は官邸で絞り出すように声を漏らした。あくまで日朝国交
正常化を第一に考える小泉には、拉致問題の重大性への理解がまるで足りなかったのだ。
初訪朝を終えて帰国した小泉は「なぜ皆、俺をほめないんだっ」と当たり散らした。
「小泉さんは、拉致の『ら』の字も分かっていない」
第四章 なぜ、一次政権は崩壊したのか
五十二歳の若さで総理になった安倍だが、これまで支持してきた右派からの攻撃にさら
される。しかし政権運営となると様々な現実的対応が必要である。その中で安倍は、全
国戦没者追悼式の演説の原稿で、こうした批判を丁寧に取り入れることも心がけた。
「明日の式辞の原稿なんだけど、『心ならずも命を落とした方々』という表現は、保守派の評判がよくなかったよね」
第五章 政治的な死者と言われて
わずか一年での突然の退陣表明。会見後の深夜、記者クラブで呆然としていたところに
携帯電話の着信があり、出ると相手は安倍本人だった。「私は求心力を失ってしまった」
こう言う安倍に、私はこれで日本は十年、時を失うだろうと考えていた。
「やれるところまで、できるだけ頑張ろうと思っていたのだけど、それも無理になった」
第六章 盟友、中川昭一のこと
政権を退いた安倍に追い打ちをかけたのが、理念を共にする中川の死だった。私も安倍
同様に親しく付き合った
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