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プレミアリーグの名門・アーセナルを率いてついに20年。
1996年に監督に就任したときは、誰も彼のことを知らなかった。一見、大学教授のような風貌のフランス人はしかし、誰よりもフットボールに精通していた。
賄賂やアルコール問題などのスキャンダルに揺れ、停滞していたチームを立て直すべく、彼は練習や食事、そして戦術を一新した。
生まれ変わったチームは、観る者すべてを魅了する美しいフットボールを披露するようになった。そして1998年、国内リーグとFAカップで優勝し、二冠を達成。彼は瞬く間に時代の寵児となった。
快進撃は続く。彼は故国フランスから無名だが才能溢れる選手たちを次々と獲得した。パトリック・ヴィエラ、エマニュエル・プティ、ティエリ・アンリ…。多国籍の選手で構成した最強のチームを作り上げた。
2002年、チームは再び二冠に輝くと、2004年には前人未到の快挙となる無敗優勝を遂げた。インビンシブルズ(無敵のチーム)と呼ばれた彼らは、世界中から賛辞を浴びて伝説となった。
しかし、チームはやがて低迷する。アレックス・ファーガソン率いるマンチェスター・ユナイテッドや新たなビッグクラブ・チェルシーの台頭によって、チームは優勝から遠のくことになる。さらに、ライバルがスター選手を獲得していく一方で、自軍の主軸は次々と出て行ってしまったのだ。
低迷するチーム、不満の声を上げ始めるファン。苦悩に満ちたチームづくりが続く。
復活の兆しが見えてきたのは、やはりスター選手の獲得だった。ドイツ代表メスト・エジルをはじめ、アレクシス・サンチェスなどが加入。チームは再び勢いを取り戻し、トップ争いに絡むようになる。そして、2014年と2015年にはFAカップ優勝を遂げる。それは皆がずっと待ち望んだタイトル獲得だった。
監督就任20周年となる記念の2016年は、レスターの奇跡の優勝にすべてを持っていかれたが、久しぶりに2位につけている。
彼には哲学がある。それは、「勝利をもたらすだけでなく、人々に美しいものを見る喜びを与えること」である。彼は常にそのことを考え、実現してきた。
アーセン・ヴェンゲルとアーセナルFC――。
これは、フットボールの歴史を変えた革命家と名門チームのすべてを描いた長い長い物語である。
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