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半世紀にわたる文筆活動の期間、常に第一線の作家として精進し、晩年には名実ともに昭和の文豪としての名をほしいままにした谷崎潤一郎が逝ったのは、昭和四十年七月三十日であった。その一周忌のひと月ほど前、谷崎ゆかりの土地である吉野の国栖で谷崎の歌碑の除幕式が行われた。『吉野葛』の読書には、それがどれほどふさわしい土地であるかがわかるであろう。古い日本の美の伝統は谷崎によって受け継がれ、今後も脈々として日本人の心の中に生き続けてゆくことだろう。歌碑には次のような谷崎の歌が刻まれている。
夕さればくぬぎ林に風立ちて国栖の山里秋は来ぬらし
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