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『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』――ふたつの作品には論理学者だった作者ルイス・キャロルがちりばめた知的お遊びがいっぱい。子ども向けのおとぎ話をよそおいながら、立派な教訓などは出てこない。論理といっても屁理屈といってもいいけれど、作者がしかけた知的遊戯を、さらに徹底的に論理的に考えてみると……。アリスと分析哲学と、一冊で二度おいしい哲学書。もしかして作者は映画や絵本よりこっち寄りだった!?
不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』を書いたルイス・キャロル(本名チャールズ・ラトウィッジ・ドッジソン、1832-1898)は、オックスフォード大学の論理学の教師だった。ふたつのお話は、オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジの学監ヘンリー・リドルの娘アリスにせがまれてした即興話をもとにしたと言われる。その意味では子ども向けであるが、論理学専攻だけに、話はきわめて理屈っぽい。この理屈は、しばしば、現代哲学の議論に援用される。
そこで本書では、「アリス」の面白い部分を著者が新訳し、そこから分析哲学を展開する。
白の女王様は言います。
「ジャムは明日、ジャムは昨日、が原則なので、今日はあげられないのよ」
木曜日が水曜日になることはない。今日は昨日ではない。でも、昨日は、一日前は今日だった。これはどういうこと?
というところから、原作の時間論について考え、さらに時間を分析哲学する。そんな趣向の、明るく楽しい哲学書です。
アリスは言う。「私は、思っていることは、言ってる。少なくとも、言っていることは思っているわ」
帽子屋が言う。「それって『食べるのものは見える』は、『見えるものは食べる』と同じだと言っているようなものだ」
三月ウサギ。「それって、『手に入れるものは好きだ』は、『好きなものは手に入れる』と同じことだって言っているようなものだ」……。
ここから始まるのは、すなわち、「逆はかならずしも真ならず」についての分析哲学、という具合。
時間、同一性、実体、無と空など、アリスからひろがる哲学世界をたのしんでください。
『アリス』は映画になっても面白いし、絵本の世界もまた魅力的だ。
でも、『アリス』を読んでテツガクを楽しむなら、
この一冊です!
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