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アンケート用紙に本音なんて書かない。それでも見えてくる、ややこしくて、ばからしくて、せつない、中3の胸に宿る思い。中学3年生の登場人物たちそれぞれが、学校や塾のアンケートに答えていくことで、自分のほんとうの気持ちに気づいていく。青春小説。
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Q5 中学生活最後の学年です。これからどんな一年にしたいですか?
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どんな一年って、受験しかないじゃん。(中略)
朝子は人生最初の大きな試練だからこそ、きちんと勝負をしてみたかった。
そうじゃなきゃ、自分は変われない。
この痩せすぎの身体を気にする性格、苦手なことから逃げたい性格、緊張しすぎる性格。そんな自分が好きになれないから、いつも自分に自信がないし、未来に対しても希望が持てない。
朝子は、そんな自分から卒業したかった。
早いうちに、できれば中学のうちに克服して、生まれ変わったような自分で高校生活を満喫したい。
そのために、この初めての関門は逃げたくないと思うのだ。(中略)
これは、自分を変えるチャンスなのだ。
これくらい大きな勝負に、全力でのぞまないと、とても今の自分を変えることはできないと思うのだ。
それで朝子は、最後の質問にこう回答した。
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A 勝負の年にしたい。
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朝子は、大きく息を吐いて窓の外を見た。
相変わらず、桜の花びらがはらはらと散っている。
すべての回答を終えてホッとしたせいか、朝子は、しみじみと本当に中学三年生になったのだと実感していた。
頑張らないと。
朝子は、最初の思惑どおり、ひどくシンプルな五つの回答を眺めながら、強い覚悟でそう思った。
そし最後の名前を書く欄に「三年一組、野崎朝子」と書くと、これは間違いでもなんでもない現実なんだと、ようやく信じられる、そんな心持ちになったのだった。
(本文より)
野崎朝子とそのクラスメイトが、それぞれ学校や塾のアンケートに答えていくことで、自分のほんとうの気持ちに気づいていきます。
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