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体格、体力、手先の器用さなどの「自然」に基づく不平等ではなく、地位、身分の区別、貧富の差といった「人為」によって作り出された不平等は、人間を惨めで不幸にする。そんな不平等の起源と根拠を問い、不幸を回避するための道筋を示す。格差社会が深刻化している今、ますます重要性を帯びるルソーの主著を、原文を感じさせる日本語で新訳! 断片のみが残された作品『戦争法原理』の復元されたテクストを本邦初訳で併録した。
近年ますます注目されるジャン=ジャック・ルソー(1712-78年)の代表作、待望の新訳!
本書は、ディジョン・アカデミーが募集した懸賞論文として1754年に執筆された。懸賞の課題は次のとおりである。「人間たちの間にある不平等の起源はなんであるか、また、それは自然法によって是認されるか」。この問いに感銘を受けたルソーは、森を散策しながら思索をめぐらし、論文の構想を練ったことが知られている。
ルソーが問題にする「不平等」とは、体格、体力、手先の器用さ、知的能力などに見られる「自然にかなった不平等」ではない。そうではなく、地位、身分の区別、貧富の差、支配隷属関係といった、人間自身が約束や合意によって作り出した不平等である。そうした不平等に拍車がかかって歯止めがなくなれば、人間は必ずや惨めで不幸な生を強いられる、とルソーは考えた。これは「格差社会」が深刻になっている現在の日本にとって、まったく他人事でない、きわめて切実な問いにほかならない。
神が造った世界には秩序がいきわたっており、それを損なうのは神の摂理の外にある人為である、とルソーは言う。だから、人間の不幸の原因は、世界を造った神にも、神が造った人間の本性の中にもない。そして、そうである以上、現実に目の前に存在する不幸を避けることは、真剣に望むなら、人間にとって不可能なことではない。これこそが、ルソーが私たちに伝えるメッセージである。
すでに複数の邦訳があるこの偉大な作品を、実力者として知られる訳者が手がける。専門家にしか理解できない詳細に踏み込むことは避け、しかし読みやすさを理由にして原文の意味を歪めることはしない。そんな実直な方針の下で完成した本訳書は、誰にでもルソーの原文を実感できるものに仕上がっている。
なお、『社会契約論』初稿「ジュネーヴ草稿」と同時期の1756年頃に執筆されたものの、断片しか残されていない『戦争法原理』を併録した。これは復元された形では本邦初訳となる貴重なものである。
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