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14世紀の黒死病(ペスト)の大流行の中で,これを神の罰として恐れたヨーロッパの人々は,霊魂を治癒し浄めるため改悛して神に赦しを請うた。また地獄の無限の責め苦に対し,従来は通過儀礼的だった煉獄観も有限な劫罰の場として深刻に受け止められていく。
模範的な訓話であった「例話」を用い,地獄や煉獄,贖罪,性欲などの事例を通して神の恩寵や信仰の大切さが説かれるなか,托鉢修道会は救済のために聖職者用の手引として例話を編集した。本書では,主として扱っているドミニコ会司祭パッサヴァンティの例話集『真の改悛の鑑』の初めての近代語訳を試みるとともに,テキストの丹念な分析と詳細な注解で,ペストや飢饉による終末的危機からの救済を求めて必死に生きる中世の人々の思考や行動を明らかにする。
富裕層は死後の救済を求めて教会に多額の金銭を寄進し,高まりゆく信仰への情熱は多くの教会建築や絵画を生み出した。それらに関するイタリアを中心とした二百数十点に及ぶ著者の手による写真と簡潔な説明は,14世紀の危機を生きた人々のありのままの姿を見事に伝え,近代へと転換する時代の予兆を示している。
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