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中世から近世における「知」の変容と「制度」との関わりを,ラテン中世を中心にビザンティン,イスラームをも視野に入れ考察する。中世の制度としての知は大学の成立と関わるが,大学以外にも思想形成の場があった。本書では知の制度を学校制度に限定せず,教授・教育の体制へと広げて考察すると共に,論理的思考を軸とする学知だけでなく,神秘思想で主題化される叡智をも視野に入れ,制度と知の影響関係を解明する。
イスラーム文化圏については,学問教授の状況と古代ギリシアを起源とする諸学問の発展を考察し,ビザンティンではアカデメイアの閉鎖(529年)以降,東ローマ帝国の哲学教育の実情を検討する。ラテン中世ではアンセルムスを通して修道院の知的活動を明らかにし,また制度の外の存在者であった12世紀の女性神秘家の,幻視体験から発する現状批判と刷新のメッセージを検討する。アベラルドゥスは自由学芸の言語に関わる三学を学知の基礎として神学を発展させたが,トマス『対異教徒大全』の叙述が神秘の次元に開かれた自然理性という理性観に基づくことを明らかにする。クザーヌスでは同時代の大学人が忘却していた愛知へと立ち戻って独自に思想展開した経緯を検討し,十字架のヨハネでは学知と神秘思想との関わりが解明される。
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