自己の解明
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著者は多くの研究や出版活動により,わが国の学界に多大な貢献をしてきた中世哲学研究の第一人者である。本著作集は日本の文化と社会に深く関わり,説教や講話,文筆活動により多くの日本人にキリスト教を伝えてきた宗教者の軌跡を全五巻に集大成したものである。
最終巻となる本巻では,信仰に親しめない現代の読者に,この著作集を支える問題意識と核心的意図を説明する。予備知識や専門的な教えを避け,人生の意義と超越という基本問題を,経験と日常的な思惟により理解する道を示す。普遍的な妥当性や正しさではなく,自己発見と超越への見通しを開く道案内を試みる。
来日して3年,根源的経験を得るために,沈黙と心の集中を求める中で坐禅と出会い,今日まで半世紀近く只管打坐に専念してきた。人間の超越体験の純粋な実践として坐禅するなかで,それを解説したり,キリスト教と比較したりすることはない。人間の内的刷新のためのかけがえのない営みであるとの確信から接心の参加者に語りかけた提唱を第Ⅰ部「坐禅―自己発見の道」に収載した。
第Ⅱ部「哲学―真なる人間への問い」では,哲学や信仰に関心の薄い若者との対話を通し,自分自身についての思索が哲学的思惟への道であることを示す。
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