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二〇一三年一月一六日、北アフリカのアルジェリアで人質拘束事件が発生した。イスラーム武装勢力がアルジェリア南部の天然ガス施設と居住区を襲撃し、同施設で働く関係者を人質にとって立てこもった事件である。発生から数日後にはアルジェリア軍の介入によって武装集団は鎮圧されたが、その過程で日本人一〇名を含む四〇名の命が失われた。
このような悲劇的事件を前にして、「反テロリズム」を主張するのは、あまりにも当然で、いまさら議論の余地はないと思われるかもしれない。しかし、単に「テロリズムは悪であり、徹底的に根絶すべきだ」という意見を声高に主張するだけでは、問題を理解することにも、再発を防ぐことにもならないであろう。それはむしろ、現実の問題に対する思考を停止させ、問題の根源を見極める努力を放棄することにつながるのではないか。
本書では、こうした問題意識に基づき、アルジェリア人質事件の深層を多面的に探っていく。各章ではそれぞれ、「事件現場でなにが起きたのか」(第一章)、「事件の対応はいかなるものだったのか」(第二章)、「なぜアルジェリア政府は強硬策をとったのか」(第三章)、「テロリズムを生んだ社会的背景はなにか」(第四章)、「テロリズムの論理とはいかなるものか」(第五章)、「グローバル・テロリズムとはなにか」(第六章)、「テロリズムに抗するためになにをなすべきか」(第七章)を考える。特に第七章では、アルジェリア出身の作家アルベール・カミュの思想を援用しながら、この事件から学ぶべき教訓を考える。
事件からすでに二年半が過ぎた。その後も「テロ」は頻発し、われわれは目まぐるしい日常のなかで凄惨な記憶を風化させがちである。しかし、「安全保障」の名のもとに「対テロ戦争」がなし崩しに正当化されている今日、事件の真相と根源的な要因(=深層)を見つめ直し、悲劇が二度と起きない未来を思い描くことには重要な意味があると信ずる。本書を通じて、あらゆる暴力に抗う「否テロリズム」の思想を提示できればと思う。(ももい・じろう)
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