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イスラムでは音楽が忌避されているというのは本当なのだろうか。よく言われる言説だが、なぜそう言われるのか、そして実際にどういう歴史をたどっているのかを本書は詳しく解説している。確かに、キリスト教と違いイスラムでは礼拝に音楽を用いない。だが音楽を用いた儀礼で有名なスーフィー教団の存在も知られている。イスラムでは音楽をどのように見ていたのだろうか。本書はこの疑問から出発し、古代ギリシアの音楽理論がイスラム世界でどのように受容されたかを見る。あまり知られていない、古代ギリシアで花開いた西洋音楽がイスラムを経てキリスト教文明へと伝播していった興味深い系譜も解説。そして、コーランとハディース(預言者ムハンマドの言行録)の中に出てくる音楽に関する記述をすべて抽出し検討する。最後にイスラム勃興以来諸王朝の君主たちが音楽に対してどのような態度をとったかも確認し、近代にいたって西洋音楽と出会った彼らが自分たちの音楽をどのように考え位置づけようとしたかを考えていく。「イスラムと音楽」という、西洋古典音楽の前史がまとめられたとも言える基本文献となる1冊。
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