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日本の精神医療が語られるとき、33万人にのぼる入院患者数やその平均在院日数の長さが問題にされることはあっても、320万人の精神疾患患者が日常的に受けている薬物療法の危険性が問題にされることはほとんどない。21世紀に入って100万人にまで激増したうつ病患者と不安障害、不眠症など比較的症状の軽い患者、症状の重い統合失調症患者などに同じような薬が処方されている。しかも普通に、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、抗精神病薬などの向精神薬が複数種類何錠も出されているのだ。なかでも抗不安薬、睡眠薬として用いられるベンゾジアゼピン系薬剤は、数十年も前から強い精神的・身体的依存性が指摘されているにもかかわらず、日本では世界一多く消費されている。
今から14年以上前、自律神経失調症とパニック障害から心療内科を受診するようになった私は、いくら通院してもいっこうに改善しない症状に疑問をもち、「薬をやめられない体になった」ことを薄々感じながらも、つい3年前まで、自分自身が向精神薬依存症(薬物中毒)になっていたことを自覚することがなかった。おそらく、睡眠薬を含む多くの向精神薬服用患者が、現在もそのような状態に置かれているものと思われる。
本書は、私自身の向精神薬依存と断薬失敗の経験、苦しい離脱症状(禁断症状)と闘いながらも断薬に成功した人々の体験談をはじめとして、製薬業界と精神医学界がつくり出してきた、「薬が患者を生み、症状を悪化させるメカニズム」を明らかにする。それと同時に、断薬をサポートし、薬に頼らない精神医療を行っている数少ない施設も紹介しつつ、日本の薬漬け精神医療を患者=薬害被害者が主体となって変革していく道筋を模索する。
私のような薬害被害者をこれ以上つくり出さないために、向精神薬の危険性と被害の実態を一人でも多くの人に知ってもらいたい。(きたの・けい)
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