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ヘンリー8世からエリザベス1世そしてジェイムズ1世が統治した初期近代は、イングランドが近代的国家体制の構築に向かう時期に当たる。イングランド国教会の設立に代表される政治的・宗教的言説流通の中で、国家意識の急激な高まりは多くの年代記とイングランド史劇を中心とする歴史劇を生み出した。本書は、16世紀初頭から1642年の劇場閉鎖までの時期に創作された50編ばかりの全歴史劇を対象に、個別のイングランド史劇に描き込まれた国家表象(イングランド表象)の有りようを時系列に沿って網羅的に記述した、演劇史研究である。エリザベス朝史劇が初期近代イングランドに固有のテクストであり、その固有性・独自性の一端が各作品に描き込まれた国家表象の検証から解明可能であるとの問題意識のもと、史劇成立の要因における宗教改革をめぐる問題系の重要性を指摘する。本書は、エリザベス朝史劇に関する本邦初の包括的・体系的研究書である。
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