経書解釈とは,国家権力をいかに表現しそれを正当化するかに関わり,儒学者と官僚は帝政国家に欠かせない存在である。元朝が宋の儒学者程頤と朱熹の解釈を科挙に採用してから,それは1905年まで続いた。
本書は清朝考証学を,宋明の理学思想から清代古典学への転換という思想的側面と,人的結合や様々な制度・政策,事件などの両面から考察し,17世紀から19世紀に至る考証学の興亡を考察した画期作である。
考証学の生成期に顧炎武や閻若?が行った貢献から,戴震・銭大昕・段玉裁・王念孫・王引之・焦循・阮元らの18・19世紀の文献学を通して,清代文献学の発展と展開を豊富な資料を駆使して解明する。
17・18世紀の江南,とりわけ揚子江下流地帯の学術共同体においてなぜ考証学が栄えたのか。その思想史的側面と社会的・政治的な制度とを総合的に分析するとともに,個々の文献学者と広範な社会的環境の間を媒介し,考証学の運動を支えた個人的・制度的な複雑な関係を考察する。後期帝政期のエリートたちの知的生活に生じた主要な変化と,新しい政治的文化的言説に移行してゆく時期の経書解釈と帝政国家の政治的合法化との関係に光を当て,さらに清代経学の形成における宗族共同体が果たした複合的機能をも解明する。
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