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上野は、「事実は小説よりも奇なり、というが、あまりにも話ができすぎているので、私が作り話を書いているのでは、と思われないか心配だ」と話していた。また「一メートルでも良い、想像の羽を伸ばしたいと思うのだが、やっぱり事実にはかなわない」とも語っていた。……
移民と辻売りという近代沖縄の底辺を貫く二つのテーマによって、底に息づく民衆の姿を映しだしたのである。初版が刊行されて後、多くの評者が「沖縄の近代史に初めて路地裏のアンマーたちが登場した」と評したのもこのためであった。それも顔の見えない「へのへのもへ」の民衆像ではなく、名前を持ったひとりひとりの人間をとおして描き出された。眉屋一族の歴史は、近代の沖縄民衆の体験であり、歴史であった。
本書の表題の『眉屋私記』は、上野の謙遜に出た表記と、眉屋一族の私記という二重の意味が込められているかと思うが、私は眉屋一族を通して沖縄民衆の歴史を記録したという意味で『眉屋史記』と受け止めている。ちなみに本書が地域の人たちに共感・共有された事例として、本書が高等学校の教師によって自主教材化され、授業で取り上げられたこと、いま一つは、本書がきっかけとなって、屋部字誌の編集事業が行われたこと、さらに沖縄タイムス社の出版文化賞を受賞したことをあげておきたい。(本書「解題」三木健氏執筆より)
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