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パスカルの思索の中心にあるのは、人間の思考や知性の卓越性ではなく、つねに身体の影響をこうむる人間の精神、精神のはたらきを妨害する人間の身体である。身体は罪の源泉であり、真理の認識の障害であるが、他方でその身体の存在こそが、人間に罪の自覚を促し、真理への到達を希求させる。そうした希求を信と呼ぶならば、信はまさに身体という桎梏を必要とする。本書は、「愛」「習慣」「直感」「中間」「賭け」など、『パンセ』の中心主題をめぐるテクストの精読を通じて、パスカルのキリスト教弁証の試みにおける人間の身体、および身体をともなう人間の生の両義的な価値を明らかにする。
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