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前著『古典残照』は11世紀ラテン文学を通して初期中世の変革の実態に迫ったが,本書は12,13世紀のラテン世界の多様な展開を描いた姉妹編である。
中世ラテン語は言語共同体を欠く死せる言語の側面と思考・学問の言語の両面をもつが,11,12世紀の文化の進展と共に真に生ける言語となった。
人文主義に特徴づけられた12世紀の精神は,理性と自然の自覚,人間本性の価値と尊厳,さらに自然の価値と秩序への関心をもたらした。また人間形成のために,古典による言語表現力と叡智が結合され,倫理学も教科として独立し,古代の自然倫理が展開された。
12世紀にはシチリアとトレドで膨大なアラビア語文献の翻訳事業が推進され,その影響は神学・哲学から芸術,文学,自然学,医学に及んだが,本書では中世スコラ学に対する多様で複雑な影響が考察される。
13世紀にアヴェロエスの著作が訳出され,中世のみならず近世にまで多大な影響を与えた。アヴェロエス主義は新プラトン主義的アリストテレス理解や知性単一説などにより激しく批判されたが,その意義を探る。
スペインではプトレマイオスやアルキメデス,ファルガーニー,キンディーなど多くの自然学・占星術書がラテン語訳され,中世自然学への伝播が分析される。
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