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『アマーロ神父の罪』で世界的作家となったケイロース文学の集大成といわれる「博覧強記」の最後の作品!
パリに住むポルトガルの貴族の狂気と再生への道を描き出す。イギリスからアフリカの植民地の権益を放棄せよ、と迫られていた共和制に突入する直前(1980 年代)のポルトガルの歴史的位置や問題点を背景に潜ませ、そうした危機を解決する道筋を作品に示したといわれるポルトガル文学を代表する作品。
太陽の下では新しい物など何もない。物事の永遠の繰り返しは悪の永遠の繰り返しと同じである。如何に多く知っていても苦しみより多く知る物はない。塵から生れた物は塵に還る、と同じように正義から生れた者は正義に還り、悪から生れた者は悪に還る。すべての物は儚い塵を嗜好するように全ての人間はイェルサレムやパリを指向する!
……ジャシントは旧約聖書の伝導書をこうして読んでいた。そして陰鬱な二〇二邸で一人前の成人として生きることに思い悩んでいたのだ。
……金の王冠を被り四頭の雄ライオンに囲まれて暮らすダヴィデの息子ソロモンの栄耀の中に自分は置かれているのではないかと。
彼は伝導書を肌身離さず持っていた。そして馬車の中でもソロモンの書を手放すことはなかった。ソロモンは悲嘆に暮れた大声で話し合える血を分けた兄弟であり真の人間性の集約であった。空は空に還る! 全ては空である!
しばしば朝からソファに長々と身を横たえ、絹の部屋着のまま貪るようにショウペンハウアーを読んでいることもあった。(第7章より)
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