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「コーチング」とは、「人の能力を最大限に引き出す」こと。それが求められているのはスポーツ界に限りません。研究やビジネスなど、あらゆる分野で必要とされています。そして、その実践者たるコーチ(リーダー、指導者)が国籍を問わないこともまた昨今の傾向です。私たちは、本書で述べられるグローバルな視点での「コーチング」を通して、日本人の新たな特性を知り、また国際社会を生き抜く知恵を学び取ることができるはずです
スポーツ界は、今や「コーチ」の時代。優れた選手には、必ずと言っていいほど優れたコーチが付いています。たとえば、水泳の北島康介選手には平井伯昌コーチ、陸上の末續慎吾選手には高野進コーチ、フィギュアスケートの浅田真央選手には佐藤信夫コーチ、レスリングの吉田沙保里選手には栄和人コーチ……。彼らは、かつてのコーチのような黒子的存在ではありません。単に選手の才能に磨きをかけるだけでなく、オリンピックでのメダル獲得といった目標に向けて周到なプランを練り上げるなど、プロデューサー的な役割も果たしています。
フェンシングの太田雄貴選手を育てたオレグ・マツェイチュクも、その一人。2003年に来日して代表チームのコーチに就任するや、フェンシング弱小国だった日本を、北京オリンピック(2008年)で太田選手の銀メダル、ロンドンオリンピック(2012年)で男子団体の銀メダルへと導き、一躍注目を浴びました。彼が特異なのは、外国人であること。そして就任時は31歳とまだ若く、コーチとしての実績がほとんどなかったことです。そんな彼が、言葉もわからず、国民性も生活習慣も全く異なる国で、なぜ、短期間のうちに選手との信頼関係を築き上げ、能力を引き出し、古い体質が色濃く残る協会を動かして輝かしい成果をあげることができたのか?
本書は、その答えをオレグ・コーチ自身が語るものです。選手として経験したソ連崩壊という歴史的事件、異国で、コーチとしての力量を疑われながら(実際、当初は太田選手に指導を拒否された)送る苦闘の日々、いかにして国際大会で実力を発揮させるか、メダル獲得への周到な戦略……。彼は言っています。「コーチは、まず人間関係からつくっていくことが重要であって、善人ではなく、公正な人であるべきだと思う」「コーチというのは満足できない人間であり、満足してはいけない人間である」。
「コーチング」とは、簡単に言えば「人の能力を最大限に引き出す」こと。それが求められているのはスポーツ界に限りません。研究やビジネスなど、あらゆる分野で必要とされています。そして、その実践者たるコーチ(リーダー、指導者)が国籍を問わないこともまた昨今の傾向です。私たちは、本書で述べられるグローバルな視点での「コーチング」を通して、日本人の新たな特性を知り、また国際社会を生き抜く知恵を学び取ることができるはずです
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