中国の仏教は外来宗教として排斥されたこともあったが,2000年の歴史をきざみ,これまで無数の仏教史籍が著されてきた。中国の仏教史籍は各王朝の歴史事象との関わりがあるため,比較検討しながら研究しないと理解できない事績が多い。
著者は六朝以降の歴史学で必ず参考にすべき仏教史籍を分類し,その大意を述べて歴史学研究の一助とし,仏教史を述べるものではない。
本書は歴史研究にも頻繁に利用され,18世紀後半に編纂された中国最大の叢書『四庫全書』や『存目』で扱われ,人々が目にすることの多い仏教史籍において,目録,伝記,護教,纂集,音義などの分野から35冊を厳選した。各書の名称,略称,異名,巻数の異同,版本の源流,撰述者の略歴およびその書の内容と体裁,さらには歴史学との関わりについて膨大な知見を活用して概説した定評の名著である。
1943年の日中戦争のさなか,現在の北京師範大学での講義に端を発してまとめられたが,戦時下にあって自らの学問と政治にいかに向き合うかを問い続けた陳垣の心情が伝わってくる。
なお訳者による明解な訳文と懇切な注解は,学習者にとり仏教史と中国史への理解の助けとなろう。
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