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人は「習慣的世界」に適応することから人生を始め,生涯にわたって習慣と関わりながら生きていきます。習慣は時として人を拘束し,時として高めてくれます。それは理性により吟味される必要があります。
古代ギリシア・ローマ以来,人間教育は「生まれつき・本性」と「習慣・習慣づけ」そして「理・教え」を中心に営まれてきました。アリストテレスは人間の卓越性(徳)には頭の良さとしての「知性的卓越性」と人柄の良さとしての「倫理的卓越性」があり,それぞれ「教え」と「習慣づけ」により陶冶されると言います。そこには理想的な人間像が含意されていますが,今日ではあるべき人間や教育の像が混迷しています。本書は習慣と教育という観点から,現代の教育のなかに新たな可能性を追求する試みです。
西洋の教育思想では,理であるロゴスとしてのイデアや神の存在が教育の根本原理として機能していました。しかし理性が道具的なテクノロジーとなり,普遍的な存在と切り離されイデアも神も失われます。情報化・消費化資本主義が跋扈するなか,多くの青年たちは怪しげなスピリチュアリズムや「金儲け」の虜となっています。
生まれつきの才能をどう引き出し,活かすのか。第二の天性である習慣がもつ悪弊を理性はどのように抑制するのか。習慣は青少年期だけでなく生涯にわたっており,それと如何に関わるのか。これら習慣についての思想的・歴史的・実践的な多くの知見は読者に知的刺激を与えるでしょう。
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