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フッサールの「現象学すること」に即して現象学的方法を彫琢し,現象学者にとって思惟の自己変貌の経験構造を「超越論的経験論」として解釈することにより,現象学の分析主題となることを明らかにする。
フッサールはカントの超越論哲学における認識論の構造を批判的に解体し自らの哲学的立場を形成した。彼がカントから継承し,カントとは異なる概念として提示したのが超越論性であった。カントにおける超越論性は,経験に依拠せずに純粋に理性からのみ獲得しうる,アプリオリな認識の領域に設定された。
現象学における経験の構造解明は感性的経験として確認される。フッサールの感性的経験はカントの受容性としての感性とは異なり,先自我的な意識層において感性的与件を構造化しつつ,独自の綜合的役割を担う。その感性独自の綜合機能という意識の原事実において,発生的現象学による分析を通して,先自我的な感性的経験におけるヒュレーの生成と,自己意識の発生的起源が明らかにされる。フッサールの超越論性は感性的な経験に根ざした「生活世界のアプリオリ」であり,現象学者が自己意識の発生を問うことが,超越論的なものの発生を問うことになることが解明される。
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