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扇子に手ぬぐいというわずかな小道具のほかは、ただ演者の「一枚の舌」によって、庶民はもちろん将軍や大名を高座に呼び出すこともできれば、遊郭や冥界に遊ぶこともできる不思議な話芸、落語。この落語の面白さを支えているものは何か、少年時代からの落語ファンでもある言語学者が、「ことば」の面から分析した、異色の落語論。志ん生や文楽、円生、小さん、談志などの実例を引用しながら、特異な芸能の特徴・構造・魅力を解読。
扇子に手ぬぐいというわずかな小道具のほかは、ただ演者の「一枚の舌」によって、庶民はもちろん将軍や大名を高座に呼び出すこともできれば、遊郭や冥界に遊ぶこともできる不思議な話芸、落語。この落語の面白さを支えているものは何か、少年時代からの落語ファンでもある言語学者が、「ことば」の面から分析した、異色の落語論。
落語は、マエオキ、マクラ、本題、オチ、ムスビ、という構造からなる「言語空間」である。先人が築いたこうした「型」の上に、多くの演者が才能を開花させていった。彼らの「ことば」にはどんな特徴があって、一般の言語活動とはどう違うのだろうか。噺家はなぜ、「えー、一席お笑いを申し上げます」とマエオキをいうのだろうか。そもそもなぜ、落語にオチが必要なのだろうか。落語の「演題」はどのように決められているのだろうか。
志ん生や文楽、円生、小さん、談志などの実演の例を多彩に引用しながら、落語という特異な芸能の特徴・構造・魅力を解読する。
1994年と2002年に平凡社より刊行された同名書籍の文庫化。
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