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マルティン・ルター(1483-1546)ほど,その名が広く知られながら,その思想と信仰の内容が理解されていない人物は少ない。宗教改革の政治的,歴史的意義は語られるが,彼の経験と信仰についてはあまり語られることがない。
ヨーロッパの16世紀はルネサンスの時代であり,精神の若返りの時代であったが,それは宗教的生命の高揚した世紀でもあった。その宗教的生命がルターの個人的体験の深みにおいて経験され,それが爆発して人々の心を揺り動かし浸透していった。しかし激しく流出していったエネルギーは500年の時を経て次第に衰退し,今日では無神論とニヒリズムが定着している。
本書はルターの優れた思想的営為を通して,宗教的生命の豊かさと純粋さ,信仰の誠実さと勇気を明らかにし,彼の宗教とその意義が制度としての教会を遥かに越えて人間自身に及んでいることを示す。宗教と霊性の可能性を現代に問う好著である。
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