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近代に染まる寸前の日本を科学者の目が見つめていた――
菓子屋の看板、人力車、屋敷の屋根瓦、和服の装い、そして、穏やかに暮らす人々。
大森貝塚の発見で知られるモース、その鋭敏な眼差し惹きつけられたのは、明治最初期日本の何気ない日常の営みだった。
東京大学教授として滞在する2年間にのこした、膨大なスケッチと日記には、卓越した科学者ならではの観察眼と、異文化を楽しむ喜びが満ちている。
彼が日本で出喰わした愉快な経験の数と新奇さは、ジャーナリストも汗をかくほどのものだ。
人通りの町を一列縦隊で勢よく人力車を走らせると、一秒ごとに新しい光景、新しい物音、新しい香り……
明治十年代のまだ近代に出会ったばかりの列島の生活を、モースは驚きと敬意をもって見つめていた。
当時の生活文化を記録した重要資料であり、なおかつ読んで見て楽しめる明治日本見聞記。(解説・牧野陽子)
※本書の原本は1939年に創元社より刊行された抄訳本です。
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