取り寄せ不可
「あなたの病気に医療は何もできません」。44歳の妻が告げられた病気は、脊髄小脳変性症。小脳の委縮により歩行困難や言語障害を引き起こし、一般的に5年以内に歩けなくなり、いずれは死に至る。根本的な治療法は見つかっていない。映画やドラマにもなった『1リットルの涙』の木藤亜矢さんと同じ病気である(木藤さんは15歳で発病し、25歳で死亡)。
妻の発症当時、47歳の夫(著者)は、不規則な毎日を送る新聞記者、しかも単身赴任中だった。自宅に戻り、仕事と両立させながら、介護と慣れない家事に取り組む日々が始まった。だが反抗期まっ盛りの二人の娘は、突然の母親の病気に動揺し、生活は荒れていく。そんな家庭を必死に守らなければならない父親として、著者ははじめて他人のことではなく、自分自身の家庭について新聞記事に書くことを決意した。書くことで、自分自身と家族の気持ちを奮い立たせたい。
〈そうだ。これは闘いなのだ〉〈災害や疾病と隣り合わせの生。いつ悲惨に見舞われるか分からないが、倒れても希望はある〉
東日本大震災を挟みながら、2000日に及んだ闘病生活をあまさず綴った「魂の記録」。
毎日新聞連載中から大きな話題を呼んだ手記は、難病に苦しむ患者とその家族ばかりでなく、すべての父親・母親に大きな感動を呼び起こさずにはおれないだろう。
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