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スウェーデンにおける1950年前後の時期の高齢者福祉をテーマとする本書は、優れて現代的な意義を有している。一人暮らしの高齢者や要介護高齢者とコミューン(市)との関係性の問題を扱っているからである。スウェーデンの当時のコミューンは、介護を必要とする高齢者や、家族や親族のいない高齢者を、本人の意思を無視して強制的に老人ホームに入所させるという非人間的なことを行っていた。本書のなかで、著者ロー=ヨハンソンはそれを強く非難している。
訳者たちがこのルポルタージュに強い関心を寄せた第一の理由は、このように深刻な問題を抱えた50年代の社会状況から、いかにして近代的な福祉国家が建設されたのかという一点に尽きる。そのダイナミックな過程の一端を知ることは、日本をはじめとする後発の福祉国家にとって大きな意味をもつ。福祉国家の特性とは、政治学者丸山眞男の表現をもじっていえば、「である福祉国家」ではなく「する福祉国家」として機能することである。いいかえれば、福祉国家としての特性とは、国家の誕生と同時に「属性」として備わるわけではなく、「創られる特性(emergent property)」なのである。スウェーデンはまさにその先進例といえよう。
スウェーデンは、どのような改革を通じて「する福祉国家」を建設することができたのか。さらにいえば、どのようにすれば、高齢社会に突入したわが国が「する福祉国家」に向かって歩み出すことが可能なのか。このような問題意識をもちつつ、本訳書を読んでいただければ幸いである。
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