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3.11をきっかけに,原発論争がわが国のみならず世界的に広がっている。著者シュペーマン(1927年-)はドイツを代表する哲学者。ハーバーマスとは立場を異にするが保守的な視点から公共的な問題に対し積極的に発言し,社会に影響を与えてきた。彼の保守主義は徹底した人権擁護論や,科学の無反省な進歩主義への批判,一貫した反原発論である。1950年代から反原子力の論陣を張り,70年代からは反原発稼働を主張,人類が制御できる技術ではないと訴えてきた。本書は3.11をきっかけにしたインタビューも含めた反原発論集でドイツでは大きな反響を呼んでいる。
著者は「核燃料廃棄物の最終貯蔵場が決まらない状態での原発稼働は,将来の世代に対し不当な要求を強いて,倫理的に不正である」と共に「生活圏のすべてを住めなくしてしまうほど,大きな犯罪はない」として原子力時代の不条理を究明する。徹底した倫理学的な考察を通して,その不合理性と非倫理性を明らかにした貴重な証言集である。今後予想される長きにわたる論争にとって避けては通れない問題にかけがえのない知恵を提供しよう。
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