わたしたちの生活を支える,コンピュータ,通信ネットワーク,ソフトウエア,携帯電話,鉄道・道路網,電力送信システムなど,現代技術の成果物は非常に複雑である。そのため,そこで何らかの問題が生じた場合に,どのようにその問題の本質を見極め,適切な対策を取っていくべきかを考えることは,非常に困難となっている。その解決方法のひとつとして,グラフ理論を応用することは有効な手段となる。グラフ理論では,通信ネットワークや集積回路といった非常に複雑なシステムを,グラフのシンプルな表現方法を用いて表すことで,余分な情報を取り去り,本質のみを表現することを可能とするからである。
本書では,数学的な厳密さ,正しさよりは,情報工学,知能工学,通信・ネットワーク工学などでの利用において特に重要と思われる概念を選び,なるべく読者に直感的に伝えられるように配慮している。情報系工学の学生,技術者,研究者にとって,グラフ理論は,システム,現象,制度などを視覚的に表現し,分析するための道具である。本書ではその点を重視し,グラフ理論の考え方や手段を学び,様々な問題への活かし方を学べるよう解説されている。
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