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本書は、著者による5年ぶり2冊目の単著である。前著『スウェーデンの高齢者ケア』に引き続き、スウェーデンの高齢者ケアシステムをエビデンス(データの裏付け)に基づきながら複眼的に分析している。つまり、光と影、発展と停滞というベクトルの異なる二つのアングルから、スウェーデンの高齢者ケアシステムを分析考察したものである。
スウェーデンは、1992年のエーデル改革以来現在に至るまで、高齢者ケアに関して様々な政策を展開してきている。スウェーデンは、数度にわたる高齢者ケアの国家戦略プランを軸に、高齢者ケアの質を高めるための政策を打ち出す発展志向型福祉国家と言える。もちろんそうした発展志向型政策が全て成功するわけではない。当然「停滞」する局面も生じてくる。
筆者の研究の特徴は、スウェーデンの政府機関だけでなく、多くのコミューンに出向き地道なインタビュー調査を行っている点である。このスタイルを取るからこそ、発展を志向しているにもかかわらず、足踏みを余儀なくされる「停滞」の局面を期せずして把握することにもなるのである。
なお、本書では、日本ではまだ実施されていない政策を重点的に取り上げたため、前著と異なり日本の高齢者ケアとの比較を積極的には行っていない。例えば、スウェーデンの高齢者ケアの諸側面に関するコミューンごとの比較に関する情報公開や、サービス利用者の満足度に関するコミューンごとの比較に関する情報公開は、世界的に見て稀有であり、スウェーデン独自であるため、日本との比較ができないのである。
さらに、認知症高齢者の人権擁護システムや高齢者虐待防止システムなど、高齢者の人権に焦点を当てて分析している点も本書の大きな特徴である。高齢者の自殺率の国際比較や、ミンネスルンドという匿名墓地など、多様なトピックスも紹介している。(にしした・あきとし)
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