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京都で芽の出なかった、自意識の強い遅咲きの画僧が動乱の胎動期を泳ぎ切り、ついには「画聖」にまつり上げられる……。これが、作品と対峙し、史料やフィールドの研究も長年重ねた著者の率直な雪舟観である。水墨画を極めんと漂泊する天才のイメージからは遠い「人間」雪舟の生涯が、作品とともに生き生きと語られる。
誰にも真似のできない個性をにじませる力強い筆致はとくに晩年に顕著で、代表作の多くが60代後半以降80余歳で没するまでに生まれている。「雪舟は飽きない」という著者の案内で、水墨画の歴史を一変させた巨人の心を感じながら絵を見るのは、まさに極上の楽しみといえる。
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