"「究極のよそ者」である途上国の研修員と日本のまちの人々の対話と
協働から紡ぎだされる、地域づくりと国際協力の新しい指針!
日本の「地域」にとって「国際協力」は、確たる目的意識か特別のコネがない限り進んで取り組むことは考えづらいものである。本書は、過疎化・高齢化によって人々が生活を続けるための機能を維持できなくなった集落が無数に存在する日本において、あえて近代化路線とは別の価値に基づいて紡ぎだされた「国際協力と結びついた地域振興」への挑戦を報告し、地域づくりへの新たな提案を行うものである。
本書で紹介される滋賀県甲良【こうら】町、山口県阿武【あぶ】町、長崎県小値賀【おぢか】町、群馬県甘楽【かんら】町は、途上国からの研修員を受け入れている。人々は研修員たちに自分たちの地域や活動について説明し、それが相手の役に立つことを実感することで、自分たちの地域に自信を持てるようになった。「究極のよそ者」である研修員たちから想像もつかないような感想をもらうことで新たな視点を学んだり、逆に視点は違っても大事にしたい根元の価値が同じであることを確認したりすることも多い。こうした体験は、住民自身が地域の資源を再認識する上で大きな動機付けともなっている。
国際協力は、必ずしもそれが行われる地域の経済や産業を直接かつ即効的に活性化しうるものではない。むしろ長期的な地域振興策として、つまり住民自身の手で地元を活性化するための「地域の力量」を向上させる点が重要であろう。途上国と日本の地方は置かれた基礎的条件は違うが、グローバルな構造の中における「辺境」という意味で共通しており、「外発的なものに疲弊した当事者」どうしだからこそ分かち合える価値がある。両者が手を携えることで、価値の創造や再発見を重ね、互いの「地域の力量」を上げることができるはずだ。
現代においては、地域を単位とした「内発的発展」をめざしつつ、グローバリゼーションの大きな流れを視野に入れることが不可避の課題である。つまり、自分たちの地域で当たり前の暮らしを続けていくためにグローバルにつながること、地球規模で考えながら地域で活動を重ねること(Think Locally, Act Globally)が求められている。本書で紹介される「グローカルな絆」―地域を軸とした途上国との新しい国際協力・国際協働のあり方―は、まさにその生きた実例といえるだろう。本書を通じて、地域づくりと国際協力の新しい指針を提示できればと思う。(にしかわ・よしあき)"
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