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昨年(2011年)7月、政府による「子ども・子育て新システム」の中間とりまとめが行われ、それに基づいて今後の保育園や幼稚園のありかたが検討されている。しかし、いかに制度的な議論がなされても、個々の現場でどのような保育が行われるのかに関する根本的な論議がなされなければ、子どもにとっての「最善の利益」をめざすことは難しいはずである。
本書は、埼玉県入間市仏子で営まれている「あんず幼稚園」が過去20年にわたり積み上げてきた保育実践の集大成である。子どもをめぐる「環境」は、大きく「物的環境」「自然的環境」「人的環境」「時間的環境」に分けて考えることができる。大人の主な仕事は、いかにしてこれらの環境を子どものために整えるかであり、環境が整えば子どもはその中で自然に成長していく。これがあんず幼稚園の保育実践であり、保育観である。その根底には、子どもの力に対する信がある。子どもは大人が何もかも手取り足取り教えなければ育たない存在ではなく、自ら育っていく力を内包した存在なのである。
本書は、あんず幼稚園の日々を3年余にわたって撮影してこられた宮原洋一氏の写真と、大人たちがどのように「環境づくり」に取り組んでいるかを記した文章から構成されている。各写真には、子どもたちの声が聞こえてきそうな楽しい解説が付されており、この独創的な幼稚園の現場の雰囲気が生き生きと伝わってくる。
保育のあり方が大きく変わろうとしている今、すでに保育に携わっておられる現場の方々、保育者を目指している方々、また広く子どもの保育・教育の将来に関心をお持ちの方々に、「環境」という視点から保育を見直すきっかけとして本書を活用していただければ幸いである。
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