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東南アジア諸国で分権化が 1990年代以降推進され、これが定着した背景のひとつに、各国の中所得国化とこれにともなう中進国的な構造転換の問題を挙げられよう。東南アジアの主要民主主義国は、1997年アジア通貨危機以後のアジア経済危機や 2008 年のリーマン・ショックを経験しながらも、世界経済のなかでは相対的に高い経済成長率を維持し、国民の所得水準はすでにOECD諸国の後を追う中所得国の位置にある。こうした経済的・社会的背景を前提に、先進国レベルとまではいかなくとも、中進国の発展に見合う住民福祉の実現に向けて、東南アジアの主要民主主義国の公共サービスセクターは拡大の途上にある。これにともない、これら各国の地方でも、住民が中央・地方政府による公共サービスに期待と圧力を高めている。その内容は、「開発主義の時代」からの経済成長を目的としたインフラ整備や教育・保健にとどまらず、新たに生活の質にかかわる環境問題や社会的弱者への権利保護や生活配慮、再分配にかかわる年金給付・介護サービスといった生活に身近で細かな行政ニーズが加わりつつある。公共サービスに対する住民の関心は、サービスがカバーする内容ばかりでなく質の問題にも向けられている。たとえば、地域ごとに多様で複雑なニーズや期待に応える公共サービスを配布する主体として、中央政府(およびその出先機関)よりも住民に身近な存在である地方政府が好まれたり、サービス内容や配布方法の変更に住民自身が意見を述べ、その実施にも住民参加の機会が増えたりと、サービスの質向上に向けたさまざまな工夫が各国で導入され始めている。
本書が着目するのは、まさに東南アジアの主要民主主義国の地方で起きつつあるこうした公共サービスの決定や配布方法の変化(「誰の資源を用いて、誰が公共サービスの中身を決め、それをいかに配布するか」)であり、そこから生じる政治過程である。すなわち、各国の公共サービスの決定や配布方法という具体的制度の分析を手掛かりに、分権化にともなう地方自治制度と政治の変化を描こうと意図している
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