きみは誤解している

小学館文庫

きみは誤解している

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出版社
小学館
著者名
佐藤正午
価格
681円(本体619円+税)
発行年月
2012年3月
判型
文庫
ISBN
9784094087024

競輪場を舞台に綴る切ない6つの人間ドラマ

「ねえ聞いてるの? 自分のことを僕って呼ぶ人間がギャンブラーになんかなれるわけないって、あたしは言ったのよ」とマリは婚約者の青年をたしなめる。JRの勤勉な駅員として働く彼の、唯一の趣味は競輪。そんな彼が、死期の近づく父の残した当たり車券を元手に大口勝負を挑もうとする表題作。信用組合に勤める女が、車券の一点勝負にギャンブルの真髄を見い出したきっかけを語る「遠くへ」。十三年間定職に就かず、競輪場で儲けた金だけで生活している独りぼっちの男が、中学時代の同級生と再会したときの顛末を告白する「この退屈な人生」。ある夜明けのくしゃみと三万円分のはずれ車券のせいで、夫婦のあいだに波風が立ちはじめた鮨職人の「女房はくれてやる」。賭けに負けたことがない女子高生が、姉の婚約者の応援に駆り出されたのを機にこっそり通い出した競輪場で淡い恋心を抱く「うんと言ってくれ」。同棲相手の会社の金を持ち出したという兄を追って、八年前のある出来事から車券を買わなくなった競輪ファンの弟が佐世保競輪場へ向かう「人間の屑」。全六篇収録。競輪場を舞台に繰り広げられる切ない人生が放つ一瞬の輝きを、透明感あふれる文章で綴った珠玉の作品集。


【編集担当からのおすすめ情報】
競輪を題材にした作品集ですが、この競技に詳しくなくても6つの物語をじゅうぶんに愉しんでいただけます。登場人物たちの普遍的な人間心理・複雑な葛藤などに、佐藤正午さんだからこそ描ける短編の切れ味と余韻も相まって、ギャンブルに縁遠い方にもぜひ読んでいただきたい傑作です。

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