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福島原発の危険性を26年前から警告していた元現場監督・平井憲夫氏。一級配管技能士の資格をもつ配管のプロとして各地の原発工事と定期点検をした平井氏の告発を取材した著者が、原発の危険性を、平井氏へのインタビュー、平井氏と高木仁三郎・原子力資料センター代表との対面、大量被曝した作業員への取材を通じて根本的に問い直す。原子炉と、その冷却のための膨大なパイプの集合体としての原発は、地震にこんなにもろかった。
一級配管技能士として内外の石油化学プラント工事を手がけ、福島第一や第二、浜岡、敦賀、島根など各地の原発建設や点検に従事した平井憲夫氏。自ら現場監督として働いた福島第一原発での従業員の大量被曝事件を、1986年、チェルノブイリ事故直前に著者の取材を受けて『週刊現代』誌上で告発し、注目される。その後、各地の反原発運動に協力し、ずさん工事、インチキ点検など現場の技術者ならではの内情を明かして、その危険性を訴え続けた。平井氏によれば、日本の原発は設計図は立派でも実際の工事や点検に従事する配管工や溶接工は二、三流で化学プラントに比べれば、技術的に10年から20年は遅れているという。配管の常識を無視したマニュアルを押しつけたり、化学プラントではとうの昔にやめた工法を原発では最新の工法と思ってとり入れたりしていた。原発は原子炉とタービンだけでなく、それらを動かすためにおびただしい数のパイプが使われ、配管でできているといってもいい発電システムである。配管が破壊され、冷却水が用を為さなければ大事故につながる。それは今回の原発事故で図らずも証明された。
1971年より『週刊現代』記者として原発の危険性や社会問題を取材してきた著者は、平井氏と高木仁三郎・原子力資料センター代表を対面させて大量被曝事件の真相に迫った。高木氏と平井氏のすすめで被曝した当の従業員を放射線被曝の専門医として知られる阪南中央病院の村田三郎医師(現・副院長)に診断してもらうと、はたして慢性気管支炎や胸部の出血斑など原発での被曝者に特有の症状があったのである。
原発での隠された事故は平井氏の告発だけでなく、全国から著者のもとに集まった。四国電力の伊方原発3号機の建設中に起きたケーブル火災を、エバラの現場監督として据え付け工事に携わった本田省吾氏は重大事故として四国支店長に報告したが、四国電力建設所長とエバラ支店長の話し合いの結果、「火災はなかったことにしてくれ」といわれたのである。技術者としての良心に思い悩んだ本田氏は、退職後、原子力保安院へ報告し、事故の調査を依頼したが、結果は炎を上げて燃え上がった火災が「くすぶった程度」と四国電力側の言い分を追認したものだった。
平井氏も高木氏も故人となって十数年たつ。その警告が戦慄すべき現実となっても、まだ原発にしがみつくのはなぜか、その背景を追及する。
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