感覚の記憶

感覚の記憶

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出版社
知泉書館
著者名
山口一郎(哲学)
価格
6,050円(本体5,500円+税)
発行年月
2011年12月
判型
A5
ISBN
9784862851222

「疲れ,二日酔いの不快感」といった身体の感覚や「恋人の眼差し」の記憶など,特定の感覚内容や記憶内容の意味はいかに生成されるか。この問いについて,発生的現象学の立場から,脳科学が脳の機能として「感覚と記憶」を解明してきた成果を受け止め,さらに科学的制約を超えて哲学独自の可能性に挑戦する。
デカルトの意識の明証性を継承したフッサールは,精神と物質に還元できない感覚を,「日常経験」の解明をとおして感覚内容の意味の生成として問うた。感覚という経験は感覚内容の持続と変化として経験される。視覚にしろ,聴覚,触覚にしろ,時間持続として意識されないかぎり,具体的に経験されることはない。瞬時に感じられる感覚とは,イデアとしての点に固執する科学者や哲学者の抽象的観念の産物に過ぎない。
自然的時間意識に対して特定の感覚内容が始まり,経過していく持続する内的時間意識によって感覚内容の持続と変化を解明する。感覚の持続を可能にする意識のあり方が「過去把持」という志向性の働きである。著者は無意識に働く「過去把持」を軸にして人知れず無意識世界で展開する感覚と記憶のメカニズムを明らかにし,科学的成果を吸収した現象学の可能性を拓く。

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