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「医療従事者のための産業精神保健」刊行にあたり
1998年度よりわが国の自殺者総数は三万人を突破した状態が続いており,特に中高年男性の自殺者の増加は,深刻な社会問題として受け止められています。この背景には近年のめざましい科学技術の革新,終身雇用制の崩壊,製造業の外注化,分社化,就業形態の多様化,成果主義導入,さらにリストラに伴う早期退職者の増加などがあり,就業者を取り巻くストレスは多様化していることがあげられています。そして2003年6月には第10次労働災害防止計画で過労自殺が労働災害として位置づけられ,2007年4月に公表された「自殺総合対策の在り方検討会報告書─総合的な自殺対策の推進に関する提言─」では,職域に関してメンタルヘルスケア支援策の充実が強調されました。また雇用関係が成立すると必然的義務として生じていた安全配慮義務が,2008年4月に労働契約法の中に明文化されました。これにより事業主は,過重労働による健康障害の具体的な予防を講ずる上で,事業所単位のメンタルヘルス対策をさらに強化する必要が出てくると思われます。現在,業務と精神障害との因果関係を巡る労災訴訟,企業の管理責任が問われる民事訴訟,長期休業者の増加,精神障害者雇用の問題などが社会問題となっており,今後,わが国で解決しなければならない産業精神保健を巡る問題は山積しています。
このような産業保健を取り巻く社会状況の中で,精神科医が果たす役割は大きく,患者側の立場に立ちつつ,企業側や産業医と連携することが強く求められております。特に職場復帰に関しては,大きな社会的問題となっており,復職のためのリハビリテーションとして職場内外での復職プログラムを実施している医療機関や職場が増えてきてます。そして職場内外で精神科医が復職判断や就業制限等の判断を求められることも多くなってきていますが,カウンセラー(臨床心理士等),保健師,人事労務担当者,上司等の管理職との連携の中でメンタルヘルスケアを実践していく必要があります。このような社会情勢に鑑み多職種に求められている産業精神保健学を盛り込んだ内容を本学会「精神保健に関する委員会」で検討した結果,同委員会編集の「医療従事者のための産業精神保健」を刊行することとなりました。
日本精神神経学会「精神保健に関する委員会」編集
担当 黒木 宣夫
担当理事 中村 純
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